子どもの進学が決まると、嬉しい反面「教育費をどうしよう」という悩みが出てきますよね。
貯金だけでは足りないとき、教育ローンを考える方も多いでしょう。でも「いくら借りるべきか」という判断は、実はとても難しいものです。借りられる金額と、借りるべき金額は違います。返済のことを考えずに借りてしまうと、後で家計が苦しくなることもあります。この記事では、教育ローンを借りる前に知っておきたい基本的な知識から、返済でよくある間違った考え方、そして本当に大切な正しい考え方まで詳しくお伝えします。
教育ローンを借りる前に知っておきたいこと
教育ローンには種類があり、それぞれ特徴が違います。借りる前にどんな選択肢があるのか知っておくと、自分に合った方法を選べます。
1. 教育ローンという選択肢はどんなときに使うもの?
教育ローンは、子どもの学費や教育に関わる費用を借りるためのローンです。入学金や授業料だけでなく、教科書代や通学定期代、アパートの敷金なども対象になります。
貯めてきた教育資金だけでは足りないとき、多くの家庭が利用しています。特に入学時期は一度にまとまったお金が必要になるので、このタイミングで借りる方が多いです。奨学金との違いは、親が借りて親が返済する点です。奨学金は子ども本人が借りて、卒業後に子どもが返すという仕組みですから、責任の所在が違います。
教育ローンを使うタイミングとしては、予定していた貯金額に届かなかった場合や、想定外の出費が重なった場合などがあります。無理に全額を貯金で賄おうとせず、計画的に借りることも一つの選択肢です。
2. 国の教育ローンと民間の教育ローンの違い
教育ローンには大きく分けて、日本政策金融公庫が提供する「国の教育ローン」と、銀行などが提供する「民間の教育ローン」があります。
国の教育ローンは金利が低く設定されているのが最大の魅力です。固定金利で年1.95%程度(2025年時点)という低さは、民間と比べても圧倒的に有利です。借入限度額は子ども1人につき350万円まで(一定の要件を満たせば450万円)で、返済期間は最長18年まで設定できます。ただし、世帯年収の上限があり、子どもの人数によって申し込める年収が決まっています。
一方、民間の教育ローンは審査が比較的柔軟で、借入限度額も高めに設定されていることが多いです。金利は変動金利か固定金利を選べますが、国のローンより高めになります。審査スピードが速いのも特徴で、急いでいるときには助かります。
どちらを選ぶかは、世帯年収や必要な金額、急ぎ度合いによって変わってきます。
3. いくらまで借りられるのか知っておく
借りられる金額と、実際に借りるべき金額は別物です。まず上限を知っておくことは大切ですが、それが目安にはなりません。
国の教育ローンの場合、子ども1人あたり350万円が基本です。海外留学や自宅外通学などの条件を満たせば450万円まで増額されます。民間の教育ローンは金融機関によって差がありますが、500万円から1,000万円程度が一般的です。中には2,000万円まで借りられるところもあります。
ただし、借りられる金額いっぱいまで借りるのは危険です。年収に対して返済額が大きすぎると、生活が圧迫されてしまいます。一般的には、年収の20〜25%以内に年間返済額を抑えるのが安全とされています。
借入可能額は審査によって決まりますが、その金額が適正とは限りません。自分の家計と向き合って、本当に必要な金額だけを借りる判断が求められます。
大学にかかる費用は実際いくらなのか?
教育ローンをいくら借りるか考える前に、実際にどれくらいお金がかかるのか把握しておくことが大切です。想像以上にかかるケースもあります。
1. 国公立大学でかかる4年間の費用
国公立大学は私立に比べて学費が抑えられていますが、それでも決して安くはありません。
入学金は約28万円、年間授業料は約54万円が標準額です。4年間で計算すると、入学金と授業料だけで約244万円になります。これは文系も理系も変わりません。国公立は学費が一律なので、計画が立てやすいという利点があります。
ただし、これは授業料だけの話です。教科書代や実習費、サークル活動費なども必要になります。特に理系の学部では実験器具や専門書が高額になることもあります。また、自宅外通学の場合は家賃や生活費が別途かかります。仕送りとして月10万円前後が相場ですから、4年間で480万円ほど追加されます。
自宅通学なら総額300万円前後、自宅外通学なら700万円を超えることも珍しくありません。国公立でもこれだけかかるという現実は、しっかり認識しておく必要があります。
2. 私立大学(文系・理系)でかかる4年間の費用
私立大学になると、費用はさらに膨らみます。学部によっても大きく変わってきます。
文系学部の場合、入学金は約23万円、年間授業料は約80万円前後が平均です。施設設備費などを含めると、初年度は約120万円、2年目以降は年間約100万円かかります。4年間の合計で約420万円が目安です。自宅外通学なら生活費を含めて900万円近くになります。
理系学部はさらに高額で、年間授業料が約120万円、初年度は施設設備費などを含めて約160万円かかることも多いです。4年間では約580万円、自宅外なら1,000万円を超えるケースもあります。医学部や薬学部になると、さらに高額です。
これらの金額を見ると、貯金だけで全額賄うのは難しいと感じる方も多いでしょう。だからこそ、どこまで貯金を使い、どこから借りるのかという線引きが重要になってきます。
3. 入学前後にかかる費用も忘れずに計算する
意外と見落とされがちなのが、入学前後にかかる費用です。受験から入学までの期間にも、かなりお金がかかります。
受験料は1校あたり3万5,000円程度で、複数校受験すると10万円を超えることもあります。交通費や宿泊費、願書用の写真代なども必要です。合格後は入学金を納めますが、これは入学するかどうか決める前に支払わなければならないケースが多く、複数合格すると重複して支払うこともあります。
さらに、自宅外通学の場合は入居初期費用がかかります。敷金・礼金・前家賃・仲介手数料を合わせると、家賃の4〜5ヶ月分は見ておく必要があります。家具家電を揃える費用も20万円前後は必要です。
入学後も、パソコンや教科書、通学定期代などがすぐに必要になります。これらを合計すると、入学前後だけで100万円以上かかることも珍しくありません。学費だけでなく、こうした細かい費用も計算に入れておかないと、想定外の出費で慌てることになります。
みんなはいくら借りているのか?
他の家庭がどれくらい借りているのか気になりますよね。平均的なデータを見ると、自分の状況を客観的に判断しやすくなります。
1. 教育ローンを借りている家庭の割合
教育資金のすべてを貯金で賄える家庭は、実はそれほど多くありません。何らかの形で借り入れを利用している家庭が増えています。
日本政策金融公庫の調査によると、高校入学から大学卒業までの教育費のうち、約3割の家庭が教育ローンや奨学金を利用しています。特に私立大学に通う場合や、自宅外通学の場合は利用率が高くなります。世帯年収が400万円から800万円の層で利用が多く、決して低所得世帯だけが借りているわけではありません。
教育ローンを使うことに対して、以前は抵抗感を持つ方もいました。でも今は、計画的に借りて計画的に返すという考え方が一般的になってきています。貯金がないから借りるのではなく、将来のライフプランを考えた上で戦略的に借りる家庭も多いです。
借りること自体が悪いわけではなく、どう借りてどう返すかが重要だということです。
2. 実際の借入額の平均は?
では、実際にどれくらいの金額を借りているのでしょうか。平均を知ることで、自分の借入予定額が妥当かどうか判断できます。
国の教育ローンの平均借入額は約180万円前後です。上限が350万円なのに対して、半分程度に抑えている家庭が多いことがわかります。民間の教育ローンでも、平均は200万円から250万円程度とされています。つまり、多くの家庭が借りられる上限ではなく、必要な分だけを借りているということです。
借入額は入学する学校の種類によって変わります。国公立大学なら100万円から150万円程度、私立大学なら200万円から300万円程度が多いようです。医学部や歯学部など学費が特に高額な学部では、さらに多く借りるケースもあります。
ただし、平均はあくまで目安です。自分の家計状況や子どもの人数、今後のライフイベントを考えて、自分に合った金額を決める必要があります。
3. 年収と借入額のバランスを考える
借入額を決めるとき、最も重要なのが年収とのバランスです。年収に見合わない借り入れは、返済を苦しくします。
一般的な目安として、教育ローンの年間返済額は年収の15〜20%以内に収めるのが安全とされています。例えば年収500万円なら、年間返済額は75万円から100万円以内です。月々の返済額に換算すると6万円から8万円程度になります。
仮に200万円を金利2%、返済期間10年で借りた場合、月々の返済額は約1万8,000円です。これなら年収400万円の家庭でも無理なく返せます。一方、500万円を借りると月々約4万6,000円の返済になり、年収600万円でもやや負担が大きく感じるかもしれません。
年収だけでなく、他のローン(住宅ローンなど)の有無や、今後の収入見込みも考慮する必要があります。子どもが複数いる場合は、下の子の教育費も控えているわけですから、上の子で借りすぎると後で困ります。バランス感覚を持って判断することが大切です。
教育ローンの返済で多い誤った考え方
教育ローンを借りるとき、良かれと思ってした判断が、後で失敗につながることがあります。よくある誤解を知っておきましょう。
1. 「借りられるだけ借りておけば安心」という考え方
審査に通って借りられる金額が決まると、「せっかくだから上限まで借りておこう」と考える方がいます。でもこれは危険な考え方です。
借りられる金額は、あくまで金融機関が「この年収なら返せるだろう」と判断した上限に過ぎません。実際に返していくのは、これからの生活の中でです。今は返せると思っても、将来的に何が起こるかわかりません。親の収入が減ったり、想定外の出費が重なったりすることもあります。
必要な金額だけを借りるという基本を忘れてはいけません。例えば入学金と1年目の授業料で200万円必要なのに、上限が350万円だからと満額借りると、150万円は使い道のないお金になります。手元に置いておくと、つい別の用途に使ってしまうかもしれません。
借りたお金には利息がかかります。使わないお金にも利息は発生し続けるわけですから、無駄なコストを払うことになります。「念のため」という気持ちはわかりますが、本当に足りなくなったときに追加で借りる方が賢明です。
2. 「返済期間を長くすれば楽になる」という思い込み
月々の返済額を減らすために、返済期間をできるだけ長く設定する方がいます。確かに月々の負担は軽くなりますが、トータルで見ると損をしています。
例えば350万円を金利3.15%で借りた場合、返済期間10年なら月々約3万3,000円、総返済額は約393万円です。一方、返済期間を18年にすると月々約2万円に減りますが、総返済額は約429万円に膨らみます。その差は約36万円にもなります。
返済期間が長いということは、それだけ長く利息を払い続けるということです。月々の支払いが楽だからと安易に期間を延ばすと、結果的に多くのお金を失います。特に子どもが複数いる家庭では、上の子の返済が長引くと下の子の教育費と重なってしまいます。
もちろん、家計の状況によっては長めの期間設定が必要な場合もあります。でもその場合は、余裕ができたら繰り上げ返済をする計画を立てておくべきです。最初から「長く返せばいい」と考えるのは危険です。
3. 「元金据置にすれば負担が減る」という誤解
元金据置とは、在学中は利息だけを払い、卒業後から元金の返済を始める制度です。多くの教育ローンで利用できますが、これも使い方を間違えると失敗します。
在学中の月々の支払いは確かに少なくなります。例えば350万円を借りて金利3.15%なら、月々の利息は約9,000円程度です。通常の返済なら月々3万円以上ですから、かなり楽に感じるでしょう。でも、この期間は元金が全く減っていません。
卒業後に返済が始まると、据置期間中に発生した利息も含めて返済することになります。据置期間が4年なら、その間の利息だけで約40万円以上になります。結果的に総返済額が大きく増えてしまいます。
元金据置は「楽になる制度」ではなく「支払いを先送りにする制度」です。在学中に余裕ができたときに繰り上げ返済できる計画があるなら有効ですが、ただ目先の支払いを減らしたいだけなら、後で苦しくなります。
4. 複数の子どもがいるのに1人目で借入枠を使い切る
子どもが2人以上いる家庭で、上の子の教育費で借りられる上限まで借りてしまうケースがあります。これは後で大変なことになります。
国の教育ローンは子ども1人につき350万円までですが、同時に複数の子どもの分を借りることもできます。ただし、返済能力の範囲内という条件があります。上の子で350万円借りて返済中に、下の子も進学となると、さらに350万円借りるのは難しくなることがあります。
民間の教育ローンでも同様です。1人目で上限まで借りると、2人目のときに審査が厳しくなります。年収に対する返済比率がすでに高くなっているからです。結果的に、下の子の教育費が確保できなくなってしまいます。
子どもが複数いるなら、教育資金は全体を見て計画する必要があります。上の子で借りる金額は、下の子の分も考慮して決めるべきです。兄弟姉妹で教育の機会に差が出ないよう、先を見据えた判断が求められます。
教育ローンの返済で大切な正しい考え方
間違った考え方を避けたら、次は正しい考え方を身につけましょう。返済を無理なく続けるためのポイントです。
1. 必要な金額だけを借りるという基本姿勢
教育ローンで最も大切なのは、本当に必要な金額だけを借りることです。これは当たり前のようで、意外と守られていません。
まず、教育費の総額を正確に計算しましょう。入学金、授業料、施設費、教科書代、通学費、自宅外なら生活費と家賃。具体的な数字を出して、そこから貯金でどこまで賄えるか引き算します。足りない分が借りるべき金額です。
「多めに借りておこう」という気持ちは捨てましょう。本当に足りなくなったら、そのときに追加で相談すればいいのです。教育ローンは在学中に複数回借りることもできます。最初から多く借りるより、必要になったときに借り足す方が利息の無駄がありません。
この基本姿勢を持っているだけで、返済はずっと楽になります。借りたお金には必ず利息がかかるという意識を忘れないことです。1円でも少なく借りることが、1円でも多く手元に残すことにつながります。
2. 返済総額を意識した返済期間の設定
返済期間を決めるとき、月々の返済額だけでなく、返済総額も必ず確認しましょう。これが将来の家計を守ります。
金融機関のシミュレーションツールを使えば、返済期間ごとの月々の返済額と総返済額がすぐにわかります。例えば300万円を借りた場合、10年返済と15年返済で総額がどれだけ違うか比較してみてください。その差に驚くはずです。
理想は、子どもが卒業してから10年以内に完済することです。そうすれば、下の子の教育費や自分たちの老後資金を貯める時間が確保できます。返済期間が長すぎると、人生の次のステージに影響が出てしまいます。
もちろん、家計の状況によっては長めの設定が必要なこともあります。その場合でも、「余裕ができたら繰り上げ返済する」という前提で計画を立てましょう。最初から長期返済で固定するのではなく、柔軟に対応できる余地を残しておくことが大切です。
3. 繰り上げ返済を前提にした計画を立てる
繰り上げ返済は、教育ローンの利息を減らす最も効果的な方法です。最初から繰り上げ返済を計画に組み込んでおきましょう。
繰り上げ返済をすると、その分の元金が減るため、以降の利息が少なくなります。特に返済開始直後に繰り上げ返済できると、効果が大きいです。ボーナスが出たとき、臨時収入があったとき、子どもが卒業して教育費がかからなくなったときなど、タイミングを見計らって実行します。
多くの金融機関では、繰り上げ返済の手数料が無料か低額に設定されています。インターネットバンキングやアプリから簡単に手続きできるところも増えています。少額からでも繰り上げ返済できるので、無理のない範囲でコツコツ返していくのがおすすめです。
元金据置を利用している場合は、据置期間中にも余裕があれば返済しておくといいでしょう。利息だけ払っている間に元金を少しでも減らしておけば、卒業後の返済が楽になります。
4. 家族全体のライフプランから逆算して考える
教育ローンは、教育費だけを見て決めるものではありません。家族全体の将来を見据えて判断する必要があります。
これから10年、15年の間に、どんなライフイベントがあるでしょうか。下の子の進学、住宅ローンの返済、親の介護、自分たちの老後資金。教育ローンの返済は、これらすべてと並行して行われます。返済計画を立てるときは、他の支出も含めた全体像を描いてみましょう。
年齢も考慮すべきポイントです。返済完了時に何歳になっているか計算してみてください。定年後まで返済が続くのは避けたいところです。収入が減ってからの返済は、想像以上に負担が大きくなります。
夫婦で話し合うことも大切です。どちらか一方が決めるのではなく、二人で家計の状況を共有し、無理のない返済計画を立てましょう。子ども本人とも、お金のことをオープンに話し合える関係を作っておくと、いざというとき協力し合えます。
返済できなくなったらどうなるのか?
万が一返済が滞ってしまったら、どんなことが起こるのでしょうか。知っておくと、そうならないための対策も考えられます。
1. 延滞すると発生する遅延損害金
返済日に支払いができないと、まず遅延損害金が発生します。これは通常の利息とは別に課される罰則的な金額です。
遅延損害金の利率は、通常の借入利率よりも高く設定されています。多くの場合、年14%から20%程度になります。1日でも遅れれば発生するので、うっかり忘れていただけでも余計な出費になってしまいます。
例えば月々2万円の返済が1ヶ月遅れた場合、遅延損害金は数百円から千円程度になります。大した金額ではないと思うかもしれませんが、延滞が続けば積み重なっていきます。さらに、延滞が長期化すると一括返済を求められることもあります。
延滞しそうだとわかった時点で、必ず金融機関に連絡を入れましょう。事前に相談すれば、返済方法の変更などの対応をしてくれることがあります。黙って延滞するのが最も良くない対応です。
2. 連帯保証人への影響
教育ローンを借りるとき、多くの場合は連帯保証人を立てています。返済が滞ると、その連帯保証人に請求がいきます。
連帯保証人は、借りた本人と同じ責任を負います。本人が払えないとなれば、保証人が全額返済する義務があります。親戚や配偶者に保証人になってもらっているケースが多いでしょうから、迷惑をかけることになります。
保証会社を利用している場合も同様です。保証会社が代わりに返済した後、その金額は本人に請求されます。保証会社からの請求は厳しく、法的手続きに進むのも早いです。一度代位弁済されると、分割返済の交渉も難しくなります。
連帯保証人に迷惑をかけないためにも、返済計画は慎重に立てるべきです。自分一人の問題ではないという意識を持つことが、責任ある借り入れにつながります。
3. 信用情報に傷がつくリスク
延滞が続くと、信用情報機関に事故情報として登録されます。いわゆる「ブラックリスト入り」という状態です。
信用情報に傷がつくと、その後のローン審査に大きく影響します。住宅ローンや車のローン、クレジットカードの新規作成などが難しくなります。一度登録されると、完済しても5年から10年は記録が残り続けます。
子どもの就職にも影響が出ることがあります。金融機関や信用調査が必要な職種では、親の信用情報をチェックされることもあります。教育ローンの延滞が、子どもの将来の選択肢を狭めてしまう可能性があるのです。
信用情報は、目に見えないけれど大切な財産です。一度失うと取り戻すのに長い時間がかかります。返済計画を守ることは、自分と家族の信用を守ることでもあります。
返済が苦しくなりそうなときの対処法
計画通りにいかないこともあります。返済が苦しくなりそうだと感じたら、早めに動くことが大切です。
1. すぐに金融機関に相談する
返済が難しくなりそうだと思ったら、延滞する前に必ず金融機関に相談しましょう。これが最も重要な対処法です。
金融機関は、返済が滞るよりも、きちんと相談してもらう方を歓迎します。状況を説明すれば、返済計画の見直しや一時的な返済猶予など、いくつかの選択肢を提示してくれます。ただし、これは延滞してしまう前の話です。
相談するときは、現在の収入状況、支出の内訳、なぜ返済が難しくなったのかを具体的に説明できるようにしておきましょう。家計簿や給与明細を持参すると、話がスムーズに進みます。
早めの相談が、選択肢を広げます。延滞してから相談するのと、延滞する前に相談するのでは、金融機関の対応も変わってきます。「払えなくなってから相談しよう」ではなく、「払えなくなる前に相談する」という意識が大切です。
2. 返済条件の見直しができるか確認する
金融機関に相談すると、返済条件の変更を提案されることがあります。どんな方法があるのか知っておきましょう。
まず考えられるのが、返済期間の延長です。期間を延ばすことで月々の返済額を減らせます。ただし総返済額は増えるので、一時的な措置として考えるべきです。収入が回復する見込みがあるなら、有効な方法です。
一時的に返済額を減額してもらう方法もあります。例えば半年間だけ返済額を減らし、その後元に戻すといった対応です。子どもの進学が重なった時期や、医療費がかさんだ時期など、一時的に支出が増えた場合に使えます。
ボーナス払いの割合を変更することも検討できます。ボーナスが減った、あるいはなくなった場合は、ボーナス払いを減らして月々の均等払いに変更することで、計画的な返済が続けられます。
3. 奨学金との併用を検討する
教育ローンの返済が厳しい場合、子ども本人が奨学金を借りることも一つの選択肢です。親の負担を軽減できます。
奨学金は子ども本人が借りて、卒業後に本人が返済します。日本学生支援機構の奨学金なら、無利子の第一種と有利子の第二種があり、家庭の収入状況や成績に応じて申し込めます。在学中からでも申請できるケースがあります。
親が借りた教育ローンを、卒業後に子どもが代わりに返済していくという家庭内の取り決めをすることもあります。ただし、これは家族でしっかり話し合って決める必要があります。子どもの負担にならないよう、慎重に検討しましょう。
奨学金と教育ローンを併用することで、一時的に親の返済額を減らし、その間に家計を立て直すという戦略もあります。複数の選択肢を組み合わせて、無理のない返済を続けることが大切です。
借りる前にできる準備とは?
教育ローンを借りる前に、できることはたくさんあります。事前準備が、後の返済を楽にします。
1. 教育資金を計画的に貯めておく
当たり前のようですが、教育資金は早めから貯め始めるのが一番です。借りる金額を少なくできれば、それだけ返済も楽になります。
子どもが生まれたときから、毎月一定額を積み立てていく方法が基本です。月1万円でも、18年続ければ約216万円になります。児童手当を全額貯金に回せば、さらに約200万円が加わります。合わせて400万円以上になり、国公立大学なら十分賄える金額です。
学資保険や積立型の保険を利用する方法もあります。強制的に貯まる仕組みを作っておくと、途中で使ってしまう心配がありません。ただし、途中解約すると損をするので、無理のない金額設定が大切です。
貯金が少なくても諦める必要はありません。借りる金額を少しでも減らすために、今からでも貯められる分は貯めておきましょう。半年で30万円貯められれば、その分は借りなくて済みます。
2. 奨学金制度も合わせて調べておく
教育ローンだけでなく、奨学金制度についても早めに情報を集めておきましょう。選択肢を増やしておくことが重要です。
日本学生支援機構の奨学金は、高校3年生の春から予約採用の申し込みができます。進学前に借りられるかどうかわかるので、計画が立てやすくなります。無利子の第一種は競争率が高いですが、チャレンジする価値はあります。
大学独自の奨学金制度もチェックしましょう。成績優秀者向けの給付型奨学金や、特定の学部・地域出身者向けの支援制度など、さまざまなものがあります。返済不要の給付型なら、借金を増やさずに済みます。
自治体や企業の奨学金制度も探してみてください。地元企業が地域の学生を支援する制度や、特定の職業を目指す学生向けの制度などがあります。情報収集を怠らないことが、選択肢を広げます。
3. 子どもと一緒に進路と費用について話し合う
お金のことを子どもと話すのは気が引けるかもしれません。でも、教育費について家族で共有することは、とても大切なことです。
進路を決めるとき、費用のことも含めて話し合いましょう。国公立と私立でどれくらい違うのか、自宅通学と一人暮らしでどれくらいかかるのか。具体的な数字を見せることで、子どもも現実的に考えられるようになります。
「お金がないから諦めろ」という話ではありません。「こういう選択肢があって、それぞれこれくらいかかる。我が家の状況ではこのくらいまでなら大丈夫」という情報を共有するのです。そうすることで、子ども自身も奨学金やアルバイトなど、自分にできることを考えるようになります。
金銭教育という意味でも、この対話は価値があります。お金を借りること、返すこと、計画を立てることの大切さを、実際の体験を通して学べます。家族で協力して教育費を乗り越えた経験は、子どもの財産になるはずです。
まとめ
教育ローンは、子どもの夢を支えるための大切な手段です。でも、借り方を間違えると家計を圧迫してしまいます。
大切なのは、借りられる金額ではなく、返せる金額を基準に考えることです。返済総額を意識して期間を設定し、繰り上げ返済も視野に入れた計画を立てましょう。子どもが複数いるなら、全体のバランスも忘れずに。もし返済が厳しくなりそうなら、早めに金融機関に相談することで道は開けます。教育ローンを上手に使って、家族みんなで子どもの未来を応援していきたいですね。

